「つながりBASE 和+叶」の大橋さんが取り組む、畑仕事を通じた保育士育成。そこには、頭でっかちではない、感覚を大切にする保育への想いが込められています。
なぜ「土」なのか―大人が子どもの心を思い出すために
子どもの頃、誰もが夢中になった泥んこ遊び。しかし大人になると、後先を考えて心にストッパーがかかってしまいます。大橋さんは「保育はそのストッパーを外した方がいい」と語ります。
子どもの心を持っていると、楽しいことを共有でき、共に楽しめる。そして土は不思議な力を持っています。上下関係や地位に関係なく、人間関係をフラットにしてくれるのです。それを実現できるのが、農業という場でした。
わからないからこそ、試しながら学ぶ
農業は、道具の使い方すらわからない状態から始まります。実は保育も同じです。子どもに対してどのように関わっていいかがわからない。
そのような状況でも、試しながらチャレンジして習得していく。畑での体験は、この「わからなさ」に向き合い、失敗を恐れずに試行錯誤する姿勢を育んでくれるのです。
まず大人が楽しむこと―保育現場での変化
畑での体験は、保育現場に確かな変化をもたらしています。大人が楽しむことで、子どもが興味を持つ。子どもの興味関心を引き立たせるには、まず大人が楽しむこと。それを見て、子どもは安心するのです。
野菜を育てることは、子どもを育てることに似ている
道具の使い方すらわからない状態から始まった畑仕事。そこで気づいたのは「子どもを育てることと野菜を育てることは近い」ということでした。
思ったように育たない。子どもの気持ち、野菜の気持ちになって考える必要がある。よく観察することで、さまざまなことが見えてくる。野菜は表情がないからこそ、こちら側の感情や捉え方が大事になります。
野菜は自分が成長するために一生懸命に生きている。子どもも一緒です。
農業に取り組むことで、自分の保育というものをあらためて見直し、振り返る機会にもなっているのです。
「農保連携」が目指す世界
この活動を続けていった先には、大人も子どもも自分らしく生きやすい世の中があります。「生きているだけで十分幸せ」―そのような人がたくさん増えたら、良い世の中になる。
「つながりBASE 和+叶」という名前には、関わる人とどんどん和を広げていくという思いが込められています。大橋さんは、農保連携という新しい考え方をどんどん広めていきたいと考えています。思考ではなく感覚を。インクルーシブに。頭でっかちではなく、土に触れることで取り戻す保育の本質が、ここにあります。